「残業ゼロ授業料ゼロで豊かな国オランダに学ぶ」【2010.02.13】

2010[1].2.13リヒテルズ氏.jpg 去る2月13日、「女性市議をふやそうネットワーク」と「市民ネットワーク・市川」の共催で、オランダ在住の教育研究家である、リヒテルズ直子さんが日本に一時帰国されたのを機に、市川にお招きしお話しいただいた。当日は市内外、遠くは長野県からの参加者も含め、55名が熱心に耳を傾け、改めて、日本の教育や労働の在り方について深く考えさせられた。

 

 

 

 リヒテルズ 直子氏 プロフィール

九州大学大学院で比較教育・社会学を専攻。1981〜93年マラヤ大学に研究留学。
オランダ人の夫とともにケニア、コスタリカ、ボリビアに在住。1996年よりオランダ在住。オランダの教育、社会事情について自主研究。著書「残業ゼロ授業料ゼロで豊かな国オランダ」(光文社)、「オランダの教育」(平凡社)などでオランダの教育、社会を日本に紹介しヨーロッパの教育、オランダブームを作った。

 

豊かな国オランダの秘訣は、
 1.「豊かな国」とは、幸福度の高い・孤独感の低い国
 2.「短時間効率よく働き、仕事以外の時間をみいだす」ライフ・ワークバランスの重視
 3.「どの子にもその発達が保証されなければならない」という考えに基づく教育システム
 4.「多様な人々が平等な関係で合意形成を図る」という「ポルターモデル」の存在
このことについて、以下にリヒテルズさんの講演の骨子をまとめてみた。

オランダでは「孤独感」を持つ子供が少なく、幸福度が高い

それに反して、日本の15歳の子どもの29.8%が「孤独を感じる」と答えた。先進国は6~10%、オランダは2.9%と最も少なかった。(2007年のユニセフの調査)この調査をいち早く入手したリヒテルズさんは、秋葉原事件等に代表されるような事件と相まって、この結果について日本の教育政策について危惧を感じた。ところが、その頃日本の教育学者やマスコミは、この件について報道するどころか、この調査より、2006年のPISA(OECDの国際的な学習到達度調査)の結果に執着し、日本の学力が落ちたと大騒ぎ。猫も杓子も、1位であるフィンランド参りをし、学力向上にばかり目が向いていたという。こんな日本の状況に業を煮やしたリヒテルズさんは、2008年11月、早速来日。日本では同行してもらったオランダの学者とともにシンポジウムを開き、マスコミに自ら連絡し、本を出版するなど、必死にアピールした。リヒテルズさんは言う。今の日本に大事なのは、学力向上ではなく、幸福感が持てるかどうかだ!学力があっても幸福感はもてないが、幸福感の向上は意味ある学習意欲を生み、しいては学力をも高めることができる!オランダは大人も子どもも幸福度が高い豊かな国だ。

 
オランダの労働は <ワークライフバランス>」を重視

少ない時間効率よく働き、仕事以外の時間を生み出している。
オランダのシンクタンクの調査によれば、高い税負担の国ほど幸福度の達成感が高く、経済も順調という結果が出たという。オランダにおけるパートタイム就業の比率は16.2%と先進国に比して高い。日本のパートとは異なり、正規雇用での短時間労働あり、税金も払うし、社会保障もある。子育て中の女性は、ワークシェアにより家事育児も十分にこなせる。そのことが何より、家庭崩壊を招かない。女性だけでなくパート雇用の1/4が男性でもある。両親とも、5時にはでき仕事を終え、6時には家族全員で食事ができる。一家で話会う話し合う時間が十分に確保される。そのことが、オランダ人の幸福度達成感を高くし、経済効率や子供の学力も向上させているのではとリヒテルズさんは語る。

  

オランダの教育は <やり直せる進路・いつでも入れる高等教育、生涯教育>

 オランダの教育では、<子供の発達が保障されているか>という視点の管理がされている      日本の文科省や教育委員会の、「教育行政をどう管理するか」とは大違い
オランダは公立も私立も学費はすべて同等に国の補助がある。また、入学試験制度ではなく卒業資格認定制度なので、資格さえ取っておけば、いつでもやり直せるし、生涯学習も可能。恵まれない事情にある子どもや発達に課題のある子どもへの追加資金が政府からでて、教師の加配や資料の作成にも充てられる。移民の子どもへの手厚い教育もされている。学校は常に<子供の発達が保証されているか>という視点で、国の教育監督局による評価表のチェックをさせ、課題が出てきたら、国費で賄われている「教育サポート機関」に相談すると、指導員が派遣され、解決に向けて共に考える。学校や教師一人が悩みを背負わないようになっている。

  

オランダの <ポルダ−モデル(参加と協働)>

    「多様な市民が平等な関係で合意形成を図るという手法」が定着している   
「オランダ病」と言われた1980年前後の経済不況と高い失業率の問題を題解した策として有名なのが「ポルダーモデル」それは、一人ひとり違っているということを自覚している人たちが一緒に生きようと積極的に参加し、議論してその中から、共通の点として浮揚してきたことから政策としていく「合意形成モデル」である。政府の役割は、利害の異なる様々な立場の人々の発言の場を作り、プロセスをファシリテートし、政策として結実させること。リーマンショック後の不況時に、労働者・企業家・政府が話し合い、「パートタイム失業制度」を作った。失業者は3年間は元の給料の7割保障される。ただし失業は50%までということで、一人当たり週36時間労働を18時間と減らし、減額分の7割は政府が補償しようというもの。この制度により、完全失業者を出さずに乗り切ったという。こうしたやり方は、労働分野のみでなく、市民性教育としてあらゆる分野で行われている。子どもたちは小学校時からAssert(自分の立場を弁論すること)を学び、共生の仕方を身につけ、こうして市民性(シチズンシップ)教育を受けて育ち、社会人になっていく。

  

日本の政権交代をチャンスに、国民は声を上げよう!!

 

         民主党が何とかをしてくれる、そのうちだれかがと、待っていてはではだめ!!

    国民が声を上げ、人の声に耳を傾け、行動すること。
日本の長きにわたった自民党政権にNO!を突き付けた国民。日本は昨年夏、政権交代が実現した。リヒテルズさんは今回、国会で22人の衆議院議員に日本の社会や教育に警鐘を鳴らし、日本の教育改革について提言をされた。いつもなら、すぐに席を立つ人が多いのに、今回は皆さんじっくりと最後まで聞いてくれたということ。現民主政権は少なくとも、意識した政策を出し始めたし、早い時期にすでに切り込んできていると彼女は感じているという。一人では社会は変えられない、こんな社会はいやだと思う人がたくさんいないと変えられないのだから!!しかし、急には変わらない。改革は長丁場。
オランダの若者は、環境問題や学校教育の授業時間数に関しても、自分たちの反対の意見表明をしているという。「不満と怒りを言葉で表現する。しかし、ユーモアと笑いをもってね。」
ポスト産業社会・ポストグローバリゼーションも時代を迎え、モノから心の豊かさへ、競争から共生へ、エクスクルージョンからインクルージョン 、大衆社会から市民社会へと価値観の異なる人と協働する生き方を求めて、オランダは「オランダモデル」を世界に示そうとしているという。

―以上―


私たちは、民主党政権誕生に期待を持ったけれど、ここ数カ月は失望感とうんざり感でいっぱいだった。しかし、文句を言っているばかりでは始まらない。リヒテルズさんから伺った「オランダモデル」を参考に、各分野でできることから始めてみよう。そして、社会に訴える行動を起こしていこう。