『もう一度ゆっくり考えよう集団的自衛権について』  2015年2月21日

                         講師:流通経済大法学部教授  植村秀樹さん

 

集団的自衛権」とは何か?「個別的自衛権」?「積極的平和主義」がどういう意味を持つのかわかっている人はどのくらいいるのでしょうか?何が何だかわからないうちに「閣議決定」というもので事が進んでいきます。3月20日に自民・公明合意のもとのもと日本は戦争をしない国から、戦争ができる国になります。今までは平和憲法のもと、日本は戦争は行わないというスタンスでした。しかしこれからは戦争に参加するかどうかを自分達で考えなくてはいけなくなります。自分たちが選んだ政治家が判断することになります。

集団的自衛権とは何か、なぜ、安倍政権はこんなに性急に軍事拡大をしたがっているのかその背景などを解説していただきました。


植村先生は早稲田大学法学部を卒業後、読売新聞勤務、青山学院大学院で国際政治学博士号を取得、放送大学講師、文部省教科書調査官を経て、現職に在席、専門は安全保障論です。NHKの日曜討論、クローズUP現代に出演なさっています。その解りやすい語り口に、この方をお招きしようということになり、1クラス40人、学生気分で講義を聞きました。

 

(T)閣議決定と集団的自衛権

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◆今までの首相は「集団的自衛権」を認めなかったのに、安倍首相からトーンが変わった。

日本の歴代の首相(岸信介、中曽根、田中角栄、小泉)は平和憲法のもと、国会でこれを憲法上認めないという答弁をしてきましたが、安倍首相は記者会見(2014年5月)でこれを容認する発言をし、法整備を進めています。これは安全保障法制の法的基盤の再構築に関する「懇談会」の報告を受けて発表したものです。

この「懇談会」というのは安倍首相と同じ意見を持つ学者、外務省官僚で構成されていますので、「集団的自衛権ありき」で話は進められています。

 

◆安倍首相の行った国民への説明とは

首相自ら行った紙芝居『邦人輸送中の米輸送艦の防護』が国民への説明です。国民受けするといって3回放映されました。これは第2次朝鮮戦争を想定したものです。

「戦闘地から脱出する日本人(子供を抱いた母親やおばあさん)を同盟国米国が救助、輸送しているとき、日本近海で攻撃があるかもしれない。このような場合でも日本自身が攻撃を受けていなければ、日本人が乗った米国の船を自衛隊は守ることができない。これが現在の憲法の解釈」とするものです。

これは軍事専門家から見るとありえない状況だそうです。軍事的な事を理解していない外務省が制作したものです。日米の取決めを見ると「避難は自国で行う」「軍艦に民間人は乗せない」と明記してあります。また輸送船には護衛艦がつきます。現代の情報戦の中、開戦してから民間人が脱出するような事態は大変起こりにくいことです

 

 脱出する子どもを抱いた親子と高齢者の絵を見た方が制作側の意図のままに納得してしまうのは残念ですが、私たちのような一般人には軍事的に見て状況がおかしいと言うことはわかりません。

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◆この閣議決定は立憲民主主義に反する

この問題は国のあり方を変えるくらい重要であるのに、選挙の争点にして国民の意見を聞くべきところを国会の審議もせずに、閣議決定で決めたのは大きな問題。立憲民主主義に反すると多くの憲法学者が反発している。

◆憲法の解釈の審査をする内閣法制局の局長も強引に代えた安倍首相

今までの内閣法制局長は「集団的自衛権」を認めず、「個別的自衛権」で憲法との折り合いをつけてきた。しかし安倍首相は首相の権限で自分と同じ考えを持つ小松氏を起用して憲法解釈を自分に有利にした。

『内閣法制局とは?』・・憲法、法律の解釈を行う部署、法律の整合(文言の調整)をします。

 

(U)安倍政権の安全保障政策

(1)「積極的平和主義」とは何か

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◆本家「積極的平和主義」があります 

ヨハン・ガルトゥング(平和学専攻・ノルウェー)の定義

消極的平和=「戦争のない状態」

積極的平和=「貧困・差別など社会的構造から発生する暴力もない状態」

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(2)安倍政権が積極的平和主義とうたって、進めているのは軍事優先と秘密主義

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◆安倍政権の安全保障政策を見ると、外交努力として外遊30カ国もしていますが中国と韓国には行きません。力を入れているのは軍事優先と秘密主義です。盛んに「国益」といいますが目先の損得に行きがちで長期的な視野に欠けます。日本が70年かけて築いた戦争をしない平和国家というブランドを壊すことになります。その影響は計り知れません。

 

(3)背景を見ると、安全保障とは関係ないようなことが

  ◆安倍氏は祖父(岸信介)の挫折と孫の妄想

   岸信介とその時代の自民党は敗戦後、憲法をアメリカの主導の下で作られたというトラウマにとらわれています。

  ◆外務省の「湾岸戦争のトラウマ」

   1991年湾岸戦争の時に日本は資金援助と後方支援に回りましたが、アメリカに評価されなかったのがトラウマになっているようです。


(4)憲法改正を進めていますが、内容を見ると戦前回帰しています。

自民党改正案を見ると近代立憲主義から逸脱したものです。まるで明治憲法の翻訳です。ドイツ憲法の第1条が近代憲法主義をよく表しています。

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(V)日本はどう変わるか/変わらないか

外交政策は目先の「国益」優先とアメリカ追随は変わらないが、防衛政策(自国防衛以外で)武力行使する国へ変わっていくであろう。

◆アメリカへの追随・・なぜ日本の外務省はあんなにアメリカが好きなのか?

 イラク戦争時に国会で「日本はアメリカの武力行使に反対したことはない」と答弁して

います。常にアメリカの顔色を窺っています。

◆各国の集団的自衛権のあり方を見てみると

イギリス、オーストラリアはアメリカ追随型です。それに対してドイツ、カナダはその都度

判断しています。ドイツはアフガン戦争で、集団的自衛権で後方支援に参加したあと、自殺

を含めて55人が死亡しています。その後のイラク戦争には参加していません。

 

参加者の質問

Q1、憲法解釈があいまいなのが良くないのではないか?

A1、現実に自衛隊を保持しているという事など憲法9条とのかい離ができてしまってい

るので難しい。

 

Q2、アメリカが集団的自衛権の拡大を要求しているのではないか?

A2、アメリカは公式には要求していない。

安倍政権はアメリカが要求しいている以上のことをしようとしているのではないか

と思われる。イギリス、オーストラリアのようにアメリカと一体化して、軍事力を拡

大し、国連の常任理事国入りを目指しているのではないか。

常任理事国に入るには軍事力がものを言う。外務省も常任理事国になると国連での

地位が上がる。

 

Q3、男の子の孫が5人いるが、今後徴兵制ができるのか心配です

A3、今は徴兵制の可能性は小さい。それよりも現代の戦争の特質を考えた方が良い。

軍事技術が進み、無人機での戦いなどが増えている。精神を病んだ帰還兵を社会が受  

け入れなければならないなど。

平和運動の人たちも過去の事だけでなく、今度の戦争はどうなるのか考えたがよい。

 

Q4、メディアはどう伝えているのか?

A4、メディアも迷っているようだ。政府の非難だけでなく何をしたらよいかわからない状  

態に見える。

Q5、何故安倍政権になって急に自民党の舵が変わったのか?自民党のリベラルはなぜ黙っているのか?

A5、@河野洋平の代がいなくなった。戦争体験者がいなくなった。

   A小選挙区制で派閥がなくなり、多様な意見が消え1党独裁になった。

   今の自民党は保守ではない。

 

 

お話を聞いて

今回の植村先生のお話で、安倍政権になり自民党が急変した理由がわかりました。

戦時中を知る議員がいなくなった事。小選挙区制で自民党の派閥が壊れ、今までは多様な意見があったのが一党独裁になってしまった事など。しかし、なぜ、外務省がこれほどアメリカ寄りなのか、なぜ安倍政権とそのブレーンはあのような戦争体験をしたのに、また戦前の国家主義の憲法に戻そうとするのか、今の憲法のもと70年間戦争のない時代を過ごしたことを、評価せず改憲、軍拡を進めることに疑問は残ります。

敗戦後、占領軍がはいって憲法が作られたことがそんなに屈辱なのでしょうか、それよりも国家が戦争で起こした悲惨な事実のことのほうがよほど重要だと思います。この自民党の法案を進める人たちは戦争で甚大な被害を受けた国民の目線で物を見ていないと感じます。

また、アメリカが世界で行っていること知ると日本のあまりな追随に恐ろしさを感じました。世界の中での日本の立ち位置をもっと考えてもらいたいです。それを考えるのが外務省ではないのでしょうか?

今、戦後70年で戦後の日本の在り方と今後が取り上げられています。

日本国家は欧米の植民地支配から自国を守るために軍備増強し、東アジアを植民地支配から守ると進出した結果、自ら植民地支配の側に回り、多大な被害をアジアの国に与えました。国家はその後戦局を見誤り、太平洋戦争へと突入し、沖縄をはじめ多くの国民を戦闘に巻き込み、アメリカに原爆を投下され、国民に甚大な被害を与えました。

そのような経緯をもってつくられた立憲民主主義に基づく平和憲法のおかげで、私たちは戦後70年一度も戦争に巻き込まれずに、経済の発展を遂げてきました。いま日本が世界で評価されるのは70年戦争をしていない平和国家」であることと、「高い技術力」だと思います。日本のパスポートを持っていれば、ほぼ世界中に自由に旅をすることができます。息子が海外で指摘され知りました)また、訪れた先では日本の技術を称賛されます。

70年間の平和への努力のおかげで受けている恩恵を海外で働く日本人、企業、学生、旅行者はどれだけ意識しているでしょうか。失ってみて初めてわかるのでは遅すぎます。日本の政治家は海外で生活・仕事をすることも、個人旅行することもないのでしょう。安倍首相の外遊を見ても自分の主張を言い放つだけで、意見交換、議論するわけではありません。これからはこうした経験を持つ人に政治家になってもらいたいです。